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サヌキノススメ第10回 その5『地濱水産と香川の海苔について』

 

■海苔の歴史と香川県の海苔養殖

 

 

海苔については奈良時代(710年ごろ)の書物に記録が残されており、養殖が始まる江戸時代までは天然の海苔のみが収穫されていました。

江戸時代から行われていた養殖も、海苔の生態がよくわかっていなかったために探り探り。

「運草」と呼ばれるほど穫れる量も少なく、高級品とされていました。

転機となったのが昭和24年。

イギリスの海藻学者が海苔の生殖法を発見したことがきっかけで、人の手で海苔を種付けできるようになりました。

 

現代の海苔の養殖方法は「支柱式漁法」「浮き流し漁法」の大きく分けて2つあります。

「支柱式漁法」は支柱を海に立てて柱に海苔網を張り、潮の満ち干きで海面に沈んだり空気にさらされることで栄養を増やします。

「浮き流し漁法」では沖合に張った海苔網を海に沈めます。水深が深い所でも可能な養殖法で、支柱式よりも場所を選びません。

 

香川県では昭和40年ごろまで河口の干潟で海苔養殖をしていましたが、「浮き流し漁法」が確立されたことで養殖場所が増し、飛躍的に生産量を伸ばしています。

平成24年度の調査によると、海苔生産量が全国5位の香川県。

高松市の浜ノ町、庵治町、丸亀市、さぬき市志度、小豆島など、海苔養殖をしている業者さんは100軒以上にのぼります。

■地濱水産について

 

 

「地濱水産」さんは現社長である地濱秀生さんの父親、地濱輝男さんが創業しました。

それまで高松沖で海苔養殖は行われていませんでしたが、ほかの仲間と共に高松市浜ノ町で海苔養殖を始めます。

今でこそ約10軒ある浜ノ町の海苔養殖業者さんの先駆け的存在でした。

 

輝男さんが海苔養殖(浮き流し漁法)を学んだのは今からおよそ50年前。三豊市詫間で海苔養殖をしていた親戚からです。

香川県産の海苔を作りたいという情熱を持って海苔に向き合い、鳥や魚からの防御策といった最新の養殖技術を取り入れるなどして、

輝男さんは今の地濱水産さんの基盤を作り上げました。

 

 

後を継いだのは輝男さんの息子の秀生さん。

小学生のころから海苔の収穫時期にあたる冬休みには仕事を手伝い、中学を卒業してからは本格的に海苔養殖に携わってきました。

独自のアイデアで作業船(海苔の収穫などをする船)を使いやすくしたほか、

地濱水産さんでは5年ほど前から海苔の養殖だけでなく、加工と販売まで一貫して行うようになりました。

そうすることで、獲れたての海苔がより早くお客さんのもとに届けられます。

全てを一貫して行う県内の業者さんは稀少で、地濱水産さんの大きな強みになっています。

 

 

浜ノ町にある地濱水産さんの工場から見える沖合だけでなく、大的場の海水浴場のあたりや下笠居など、

2メートル✕25メートルを1枚として、700〜800枚の網が設置されています。

 

■海苔の出来について

 

その年の海苔の出来は、山から川をつたって海に流れてくる栄養素が豊富かどうか、

台風の到来で海がかきまぜられて栄養が豊かになっているかなど、1年をトータルした天候に左右されます。

海苔養殖は、海に「畑」を作って海苔を育てているような感覚です。

畑に栄養がたっぷりあれば真っ黒で甘い、瀬戸内海ならではの海苔ができあがります。

また、毎日海苔の様子を見てやることで、いち早く異変に気づけるかどうかも大事になってきます。

 

■地濱水産の海苔ができるまで

 

海苔は「藻」の仲間。

いわば菌が海苔の「種」になります。

種を専門に扱う種屋さん(香川県にもあります)に自分たちが使う網を渡して、種をつけてもらいます。

種は顕微鏡で見なければ確認できないくらい小さなもので、広島の牡蠣殻に入れられて育っていきます。

 

網は冷凍保存しておき、海の水温が下がったころ10月中ごろに海に出します。

海苔が2センチほど伸びたら網を海上にすべて引き上げ、乾燥させることで悪い菌を殺菌し、弱い海苔を間引きます。

さらに海苔を再度冷凍することで、そのほかの悪い菌も殺菌します。

 

11月半ばになり、さらに水温が下がってきたらまた網を海へ出して本張りします。

本張りから約15日後、1番海苔ができあがります。

 

昔はハサミで摘み取るなど手作業で収穫していましたが、今は「もぐり船」とよばれる作業船で網ごとすくいあげ、船の上部に設置したバリカンで刈り取っていきます。

 

 

刈り取った海苔はそのまま船にのせられて船着場へ。

大きなタンクに移されたあとゴミが取り除かれたり、細かい細断を経て、収穫の翌日には乾燥機にかけられて海苔になります。

 

1日にできる量は7〜8万枚。

ただし、海苔の収穫時期である冬は風が強いことが多く、その場合は収穫を取りやめます。

 

 

およそ15日周期で海苔は収穫でき、黒い海苔の色が色落ちするまでよくて10回穫れるといわれています。

香川県だと味付け海苔を好む消費者が多いそうで、地濱水産さんでも味付け海苔と焼き海苔を販売しています。

味付けは味付け専門の別業者が行いますが、

地濱水産さんの海苔は厚いのが特徴なので、海苔の風味を残しつつもしっかりとした味付けにできあがるよう、細かな注文をしています。

 

■地濱水産の想い

 

私自身もそうだったように、香川県に住んでいるのに香川が海苔の産地のひとつだということを知らない方はたくさんいます。

まずは香川県民に海苔のことを知ってもらい、消費してもらうことから始め、そこから全国に香川の海苔を広めていきたいと地濱水産さんは考えています。

職人として妥協のないものづくりをする現社長の秀生さんを柱に、奥さんの美保さんが直売所の経営や広報を担います。

ほかの社員さんや同じ浜ノ町で海苔を養殖している仲間とも協力し合い、瀬戸内海で育まれる海苔をこれからも守ってほしいと思うのですが、

そんななか、海が痩せてきたと地濱水産さんたちは話しています。

 

本来ならば黒いはずの海苔。

色落ちが始まって色が薄くなったり緑色になると商品としては出荷できません。

例年12月から3月まで、よくて10回は収穫できる海苔ですが、1月ごろに色落ちが始まることも多く、生産量は毎年減っています。

燃料の高騰で養殖業者さんの数が少なくなったのも起因して、2000年度に9億7900万枚あった生産量は2014年には3億5500枚まで減少。

そこで色落ちの原因を探るべく、地濱水産さんをはじめとした養殖業者さんの働きかけもあって、来年度に環境省が水質調査に乗り出すことになりました。

 

 

甘くて口のなかでとろける食感が独特の新ノリ。

新海苔だけでなく香川の海苔そのものをたくさんの人に味わってもらい、香川県産の海苔を広く知ってもらうためにも、

海の畑である瀬戸内海で何が起きているのかをしっかりと調べてほしいと思います。

 

地濱水産さんのホームページはコチラです。

 

ハスイ