サヌキノススメ第7回 その2『小比賀彫芸(欄間彫刻)』
高松の片原町でお昼ごはんを食べ、歩くことおよそ10分。
お邪魔したのは『欄間彫刻』の伝統工芸士・小比賀(おびか)正さんの「小比賀彫芸」さんでーす!
大きなガラス窓に作業机が面しているので、通りすがりに工芸士さんの技がのぞけちゃうお家です。
こちらはご自宅兼工房。出入口には小比賀さん手づくりのドア飾り!
ネコかわいいですね〜。
和風建築が少なくなって欄間の需要が減っているなか、 欄間彫刻の技術を活かして何か作れないかと考案されました。ドアにはめこむような形です。
小比賀正さんは中学卒業後、栗林にある土居工芸さんに弟子入り。
約16年修行をして独立し、昭和50年(1975年)に小比賀彫芸を創業しました。
伝統工芸士にも認定され、今に至っています。
正さんはお話しやすい雰囲気の優しい方なのですが、 欄間の未来に対する想いがぐいぐい伝わってくる熱い職人さん!
欄間の現状から、これからどうしていくべきか、たくさん語っていただきました。
と、その前に改めて。みなさん、欄間はご存知でしょうか。
和室と和室をむすぶ襖(ふすま)の上に設置されていることが多いのではと思います。
つい最近まで、風通しや光取り、装飾的な意味合いから、和風建築には欠かせないものでした。
家によって必要な長さや厚みも違うために規格がなく、全てオーダーメイド。
上の画像にある欄間はけっこう厚みがありますねー。
現代の技術をもってしても、機械では作れないのが欄間彫刻!
梅の枝や花が上にいったり下に行ったり交差したり。
高低差はもちろん、デザインによって彫り方も細かく違っています。
画像の欄間はまだ製作段階。
これからさらに繊細に、リアルに形づくられていくのですが、 途中の今の段階でも、うーん、見どころがいっぱい!
どこからどう掘っていけばこうなるのか不思議です。
欄間のモチーフは依頼主さんの希望にそってくれます。
松竹梅などおめでたい絵柄はもちろん多いそうですが、雷神風神や七福神などの神さまや、香川の名所をモチーフにした欄間なども製作されていました。
大きさも形も一枚として同じものがない、自分の家だけのオンリーワン。
ご自宅や親戚のお家に欄間がある方。きっと家主さんやご家族の何かしらの想いがこめられているはずです!
作業机の上には使われる彫刻刀がズラリ。
大まかなところを削る荒彫りで使うもの、こまかい彫刻をするものなど、自分の手を使うように持ち替えながら彫られていきます。
お寺の屋根支えに使われる肘木(ひじき)の製作も受けている小比賀さん。
香川の西部で行われるお祭り「ちょうさ」の彫刻もしたりと、欄間に限らず注文の幅が広いそう。
肘木、ちょこっと試しに彫刻刀で削らせてもらいました!
大きな削りカスがぽろぽろ落ちていたので、簡単に削れるとおもいきや。
参加者さんいわく、とっても硬かったそうで、うすーく皮がむけた程度。
屋外に使われることもあり、長持ちさせるためにも丈夫な木を使っているとのことです。
これはこの肘木だけでなく欄間にも言えます。
硬い木を削る、彫るには技術や時間だけではなく、体力も必要です!
次に体験させてもらったのが電動ミシンをつかっての作業。
ミシンと聞いて思い浮かべた家庭用ミシンとは全てが違いました・・・。ちょうどいい画像が無くてわかりづらいのですが、欄間も切れるように横長になっています。
欄間製作に欠かせないのがこのミシン作業!
欄間は向こう側が抜けていますよね。
全てを手で彫っていくわけではなく、あらかじめこのミシンで抜いているんです。
ミシンに装着する針の部分は、木の厚さや種類、用途によって違っています。
彫刻刀のようにこんなにたくさん種類があるんですね。
きれいに整列しています。
こちらは欄間で抜いた部分の端材で作る置物。余った木も捨てずに小さなものの材料になります。
しかし下書きの段階からリアルです。
そして細かい・・・。
小比賀彫芸さんでは正さんと奥さんがものづくりをしています。
主に欄間を彫っているのが正さんで、奥さんは木の板を抜くミシンの作業を担当。
小物や置物など、奥さんが作るものも多くあります。
何度か打ち合わせをしたときに商品をたくさん見せていただいたのですが、長年お仕事をお手伝いしてきた奥さんの技にも目を見張りますよ!
こちらが奥さん製作の壁掛け欄間!後ろに金具がついています。
これをミシンで抜くだけでも相当細かいですよー!
ちょっとしたインテリアに良さそうなこちらは、女性ならではの感性で作られているなぁと思いました。欄間もこういう楽しみ方ができるんですね。
小比賀さんの工房にはこうした置物のほか、受注生産している表札の見本なども並んでいます。
フクロウのモチーフはいつの時代も人気だそうです。
たしかにサン・クラッケでもフクロウのものはよく売れております〜。
欄間は和室がふたつ続いて設けられることが多いもの。
現代、新しく建つ家は経済面の問題や技術者の減少などから、洋風のものが圧倒的に多くなり、
それにあわせて欄間の需要も減りました。
小比賀彫芸さんでは時代の変化によって物の需要が変わっていくのは仕方のないことだと受け止めながら、欄間彫刻の技を活かした商品開発をしたり、
好きな人に技術を継承できるようにと、リビングたかまつさんを通じて彫刻教室を開いています。
深いお話も聞きつつ体験もできて、とても興味深い時間を過ごせました!
小比賀彫芸さんありがとうございました!
作品の数々を見ていると小学校ぶりに彫刻刀をにぎりたくなったハスイでした。
次回は小比賀彫芸さんから徒歩1分。
もうひとつの欄間彫刻屋『朝倉彫刻店』さんへ参りまーす!!
ハスイ