サヌキノススメ第5回 その2『川口屋漆器店(香川漆器)』
午後におじゃましたのは「川口屋漆器店」さん!
香川の漆器屋さんとしては一番東に位置していて、場所はさぬき市長尾です。
ところでみなさん、香川漆器についてご存知でしょうか。
香川の工芸品のなかで国の伝統工芸品(正確には経済産業大臣指定伝統的工芸品)に指定されているものは現在2つあります。
1つは前回の見学会でうかがった『丸亀うちわ』もう1つが『香川漆器』です。
5つの技法が登録されていて、人間国宝も数名いらっしゃいます。
見学会で一度は訪れておきたかった香川漆器のお店を、今回見学することができましたー!
もとはよろず屋だった川口屋さん。
戦後、三木町池戸で家具や漆器をつくっていた親戚から下請けをする形で、漆器作りを始めたそうです。
現在の社長は2代目の佐々木敏晴さん。
そうです。川口屋漆器店さんを営んでいるのは「川口さん」ではありません!
川口屋という名前はよろず屋さん時代から使っていた屋号です。
佐々木敏晴さんの説明付きで、川口屋さんの作業場をひと通りご案内していただきました!
働いていらっしゃったのは全員女性。
漆器を作るのは女性のほうが多いのだとか。
まずは敏晴さんの足元あたりにご注目。
こちらは漆を塗る前の「木地(きじ)」と呼ばれるもの。素地(きじ)ともいいます。
木地屋さんに発注した木地に、川口屋さんが漆を塗っていきます。
ちなみにほとんど香川県の木地屋さんに発注しているそうです。
木地にさっそく漆を塗る!!のではなく・・・
まずは表面をみがいて平らにするところから。
下地になる木地を細かな凹凸もなく平らに仕上げなければ、光があたったときに乱反射してしまい、完成品にツヤ感がでません。
さわったときにサラッとしているような加工をするのも大切。
漆器づくりの長い長い行程のほぼ最初の段階から、漆器の出来を決める重要な作業がはじまります。
こちらは後藤塗の柄をつける作業です。
後藤塗は5技法のうちのひとつで、朱色とちょっと独特な模様が特徴。
すでに塗ってある漆の表面を傷つけることなく削り、みがいていく作業とのこと。
手が一歩方向によどみなく動いています。
みがく道具もいろいろ。炭はふつうの炭ではなく、油木を炭にしたものです。
後藤塗に限りませんが、みがいて、すりこんで、研いで、乾かして(漆を固めて)など、
工程を何度も繰り返すことで漆器は出来上がります。
こちらでは表面を整えた木地に漆を塗っています。
川口屋さんの出入口から一番奥側の部屋です。
お茶碗やどんぶりの中には様々な色の漆!
「漆」は漆の木からとれる樹液。精製したものが市場に出回るのですが、
塗る前の漆はカフェオレのような色で、空気に触れると透明のようになります。
漆といえば黒!赤!というイメージがありがちですが、顔料を混ぜることで様々な色を出しているんですよ。
木地をつくる木地屋さんがあるように、漆には漆屋さんがあります。
漆屋さんにはすでに色をつけた「黒漆」や「朱漆」など用途に合わせて商品があって、
川口屋さんでもいくつかの業者さんから漆を仕入れているそうです。
こちらも漆を塗る作業をする部屋。
右手前に置いてあるの円柱状の入れ物が漆が入った容器です。この状態で送られてくるそう。
この部屋の奥手の引き戸!
別の部屋につながっているのですが、その部屋とは!
並べられた漆器たち。
ここは「室(むろ)」といって、塗った漆を乾かすところです。
中を水分で湿らせて、保湿しながら乾かすのが特徴。
技法によっては何度も塗りと乾燥を繰り返す漆器づくりにおいて、要の場所になっています。
中に入れた漆器の数や季節で乾燥具合や湿度が変わるので、じゅうぶん気を配らないといけません。
と、ひと通りの案内をしていただいたあとは2階へ。
2階は商品が並ぶスペース!
お皿、お盆、箱物と、塗りや装飾が違う香川漆器の数々。
普段使いできそうなもの。特別な日に使いたいもの。鑑賞用に置いておきたいもの。
これだけ数があると眺めるのも楽しかったです!
装飾が施された本格派も数多く並べられています。
香川漆器の5技法のひとつ。おなじみの象谷塗のコーナー。
冠婚葬祭の贈りものとしてよく使われていたので、象谷塗のお盆は香川の各家庭に1つはあるのではないでしょうか〜。
象谷塗は使い込んでいくうちに模様の陰影が深くなっていきます。
使っていくうちに味が出る工芸品っていいですよね。
さて、香川の漆器は他の産地とくらべても塗りの手法がとても多いそう!
上の商品は「すり漆」という技法だと思われます。
木地の木目を残しているこちらも漆が塗られているんですよ。
カラフルな漆器も目を惹きます。
こちらのシリーズは若い世代にも人気だとか。
漆屋さんから買った漆で、川口屋さん独自の色漆もつくっております。
こちらは今年度のかがわ県産品コンクールで最優秀賞をかざった『Holiday’s dish(カトラリー付)』
色漆のかすれ模様と黒漆のしっとりとした輝きがきれいですねー。
なんといっても木のスプーンは熱いものをすくっても口につけたとき熱くありません!
便利なだけでなく漆で丈夫になったカラトリーは「はじめての漆器」にオススメです。
漆器の商品スペースのお隣は、まさかの雑貨屋さん!
敏晴さんの息子さんの康之さんと娘さんで営んでいます。
『shop+gallery 87.5』という店名の由来は、
88ヶ所霊場の87番札所・長尾寺と88番札所・大窪寺の間にあるから!
なるほど。確かにちょうど真ん中あたりに位置しています。
かわいい生活雑貨のみならず、わけあり漆器の販売もしていますので要チェックです。
息子さんたちが直接目利きして選んだ日本全国の雑貨とともに、
香川の伝統工芸品・高松張子も並んでおります!
大きな虎は現在サン・クラッケに置いていない宮内張子です。大きな口が大迫力!
きっと漆器が持つ根本的な良さは「丈夫で長持ち」であること。
もし割れたり欠けても、破片があれば修理だってできます。
伝統工芸品に指定されている5技法ばかりが『香川漆器』ではなく、
もーっと気軽な気持ちで使える漆だってたくさんあります。
まずは手に届きやすいお箸やスプーンなどのカラトリーから、漆器のある暮らし、いかがでしょうか。
川口屋漆器店さんのホームページはこちら。
そしてshop+gallery 87.5さんのブログはこちらです。
川口屋漆器店さんのみなさま、お忙しいなか作業も見せてくださってありがとうございました!
自宅が長尾ですので打ち合わせは自転車で行きました!ハスイでした〜!
次回はお昼ごはんと立ち寄り先について更新しまっす!!
ハスイ